2012/12/30

よいをまつ

14「まてどくらせどこぬひとを、よいまちぐさのやるせなさ、こよいはつきもでぬそうな」





「浅野後輩」
「うん、日出先輩」
「うやまってください」
「わかりました」
「そういえば、浅野後輩の名前を聞いていません」
「浅野だよ」
「うやまってください!!」
「浅野です」
「え、名字じゃないんですかそれ」
「あ、そういうこと …ですか」
「わたしは日出夕霧です」
「ゆうぎりせんぱい」
「ゆうぎりせんぱいです」
「変わってますよね。良い名前だ…ですけど」
「わーい!そうですかあ?」
「…どっちがどっちの反応?」
「よい名前がわーいです!わーい!」
「それで、浅野先輩」
「うん、日出後輩」
「浅野先輩は浅野なに先輩なんですか?」
「え、あー」
「あれ、お名前が嫌いなお方ですかあ」
「いや。でもあまりいないかもね」
「わたしだってそうですよお!」
「ゆうぎりこうはい」
「ゆうぎりこうはいですよー!さあ!さあ!」
「あさのよいまちです」
「んん?」
「あさの、よいまち」
「よいまち?」
「よいまち」
「頭が足りなくて脳内変換できないですー」
「宵の明星の宵に、待ち合わせのまち。うぇいと」
「…ちょっと待ってくださいね。こっち向かないでくださいね。」
「なんで?」
「ぐぐります」
「なるほど」
「……ああ。よいまちですね。あさのよいまち。浅野宵待。さわやかネームですね」
「日出夕霧、もね」
「そうですかー?」
「そうですね」
「…まてどくらせどこぬひとを、よいまちぐさのやるせなさ、こよいはつきもでぬそうな」
「ん?」
「…あれ、知らないんですね」
「もう一回」
「待てど暮らせど来ぬ人を、宵待草のやるせなさ、今宵は月も出ぬそうな、です」
「なんぞ」
「詩らしいですよ。宵待草っていう」
「へえ」
「竹久夢二さんの詩らしいですよ」
「覚えておく」
「知識が増えましたね!」
「待てど暮らせど来ぬ人を、宵待草の……  …何だっけ」
「宵待草のやるせなさ、今宵は月も出ぬそうな。出ぬ、さうな、ですけどね」
「でぬさうな」
「てふてふ」
「てふ」
「ぴかてふ」
「ピカチョウ!?」
「ぴかぴか」
「ピカチョウ、じゅうまんぼると」
「ぴかー。ずぎゃぎゃぎゃぎゃ」
「何だっけ」
「待てど暮らせど来ぬ人を、宵待草のやるせなさ、今宵は月も出ぬさうな、です」
「さうか」
「さうです」