12:「向いてないでしょうか」
「浅野先輩」
「うん、日出後輩」
「浅野先輩は、数学がやりたいんですか?」
「え?なんで?」
「なまものの先生が、言っていたんですよ」
「…うん」
「生物学科の大学生は、化学を学ぶそうです」
「へえ」
「化学科の大学生は、物理を」
「うん」
「物理学科の人は、数学を」
「なるほど」
「数学、やりたいんですか?」
「やりたくなくはないよ」
「いーですねえ」
「頑張れ、日出後輩」
「がんばります。で、まだ続きが有るんです」
「数学科の大学生?」
「はい。じゃあ数学科が何をするのかというと」
「うん」
「哲学だそうです」
「…へえ」
「そう思うと、先輩、高校でやることのなんてつまらないものかと思いません?」
「…でもまあ、それがないとその先もできないんじゃないかな」
「前向きですねえ」
「現状を疑う力がないだけだよ」
「そーですか」
「……」
「……」
「浅野先輩」
「うん」
「わたし、もののことわりやるの、向いてないでしょうか」
「…俺に言われても、なあ…」
「ですよねー。わたしもそう思いますけど」
「うーん」
「やりたくてもついていけなくなったらしょうがねーじゃんって言われました」
「誰に」
「弟です」
「年下…」
「なまいきな」
「まあ、まだ1年、あるだろ日出後輩」
「変わるもんですかねえ」
「意外とね」