2012/10/10

7

7:「さあ、分からないですけど」




「日出後輩?」
「いますよー!」
「どうも」
「どうもー。今日はピアノ弾かないんですかー?」
「うーん、気分じゃないかな」
「寒いですもんねー」
「そうだね」
「センチメンタル先輩ですね!」
「センチメンタル先輩ですか」
「こんにちは、センチメンタル先輩」
「うん」
「えーと、浅野先輩」
「うん、日出後輩」
「来年から、いないんですよね」
「留年はしたくないからなあ」
「してしまえ」
「普通に嫌だよ…」
「冗談ですよ。あー、またぼっちめしになるの嫌ですねえ」
「友達、作れよ」
「知ってますか先輩、友達って作れるものじゃあないんですよ」
「そりゃあそうだね」
「ていうか先輩、勉強しないんですか」
「うん?」
「受験生のくせに」
「受験生のくせに、だね」
「ああ、頭いいんでしたっけ。しんでほしいです!」
「明るい声で死んでほしいとか言わないでください」
「しんでほしいです…」
「…うん……」
「冗談ですよ。いいなあ先輩、物理教えてくださいよー」
「電気つけていいなら、いくらでも教えるけど」
「考えておきます」
「灰になられたら困るからね」
「そうですねー、私も困りますー」
「頑張って」
「頑張ります」
「うん」
「ところで、浅野先輩」
「うん、日出後輩」
「わたしが楽譜持ってきたら、弾いてくれますか?」
「…ここで弾けっていうなら電気付けなきゃできないけど」
「それは、まあ、お任せしますけど」
「うん、弾けるようなのだったら弾くけど」
「わーい。じゃあ今度持ってきます」
「弾きたい曲?」
「弾けたらよかったんですけどねえ」
「難しいやつ?」
「さあ、分からないですけど」
「分からないのかよ」
「わたしには、弾けそうもないですね」
「なるほど」
「音源、ないですけどいいですか?」
「うん、多分大丈夫」
「あ、浅野先輩」
「うん、日出後輩」
「やっぱり譜読み終わってから、聞かせてください」
「了解しました」
「ていうか浅野先輩」
「うん」
「勉強しなくていいんですー?」
「してるよ…」
「譜読みしてる場合なんですかー」
「まあ、やってるよ。そこそこ」
「いいですねー、よゆうで…」
「余裕では、ないけどさ」
「これだからあたまのいいひとは」
「ほっといてください」