2012/09/29

なぞの文派生

1:名前は日出夕霧です。




「いきなりピアノ弾いてる人の後ろに立つのは,どうかと思う」
「いきなりじゃないですよ。ずっといましたから。」
「暗闇で何を…」
「ぼっちめし」
「悲しいな」
「あなたに言われたくないです」
「君に言われたくないな」
「ピアノって、電気つけなくても弾けるものなんですね。かんしん」
「昔からやってれば、そんなもんだよ」
「自慢された!」
「してねえよ」
「電気つけないんですか」
「つけてほしいですか」
「いや、このままでいましょう。わたし、光を浴びるとハイになってしまうので」
「日常生活に支障が出ないか」
「白熱灯に限りますから、平気です」
「なるほど」
「……」
「……」
「ところで、誰ですか?」
「俺が聞きたい。昨日までいなかっただろ」
「いやだなぁ、ずっといましたよ〜」
「ずっとか」
「ええ。春から。」
「春!?」
「ステージ裏から見てました」
「言えよ」
「いやあ、わたしこみゅしょうなんですよ〜」
「春からぼっちめしかよ…」
「…社交界ってやつは、難しいものなので」
「だろうな」
「昼休みに暗闇でピアノ弾いてるような人もいるし、本当ままならないです」
「本当になー」
「……」
「……」
「…で、何で今更コンタクトを?」
「わたしの、めがねを、楽譜のところに置きっぱなしにしてしまったので」
「え、ああ、これね」
「取ろうとしただけです。返してください。命に関わります」
「眼鏡っ子か」
「色眼鏡っ子です」
「偏見はよくないぞ」
「そういう偏見はよくないと思います」
「ごもっとも」
「悔い改めてください」
「そうだね」
「人生を」
「人生かあ」
「……」
「……」
「…で、暗闇の講堂でピアノを弾く謎の男子生徒Aさんは誰なんですか?」
「三年一組、浅野」
「…あさの」
「男です」
「その声で女だったら困ります」
「ですよね」
「朝の野原ですか?」
「いや、深い浅いの、浅い」
「そうですか。私は、」
「…うん?」
「二年生で。」
「うん」
「名前は、日出夕霧です」